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晴天です。暑くも寒くもありません。フェリーに向かう車のスピードがつい早くなってしまいます。クラブバスから4番ホールが見えてきました。手入のきいた芝生の緑が朝日に映えています。もどかしいようにクラブハウスに入ると長谷君がいました。農園の作物を賞品にと持ってきてくれたのだそうです。それと、とわ会のもろもろの調整にも駆けつけてくれたのです。
第1組は幹事の岡本君とわたしが入り、そこに中島君が加わりました。このメンバーは優勝、準優勝をしたばかりですからハンディーが厳しく、「是が非でも優勝」という雰囲気ではありませんでした。お互いのフォームを見合いながら「トップが十分に上がってなかった」、「打ったときに体が突っ込んでいた」、「打つ方向が最初から違っていた」などとコースレッスンの様相です。
わたしも両君のショットをしっかり見させていただいて、よいところ努力が必要なところなどを伝えました。これは自分自身にとってもとても勉強になるのです。それにしても中島君の成長振りは立派です。最終ホールでは充実感に満たされ、ピンをカップに戻しながら、「きょうはいい勉強になった」と挨拶を交し合いました。
風呂はとわ会メンバーのみです。貸しきり状態です。幹事ですから早く上がらなければなりません。手早くシャンプーをしていると第2組が入ってきました。華やいだ様子です。「坂倉は3アンダーだから優勝まちがいないな」、「河村もいいとこに行くんじゃないか」、「おれは2オーバーだから難しいかも知れんな」などという言葉が風呂の中で大きく反響しています。
河村君が2オーバーということはグロス83で回ったことになります。本人にとっては不本意なスコアーかもしれませんが、腰痛と戦いながらでは見事です。
「腰痛と仲良くしながらゴルフが出来るだけでも幸せだよ」と常々話す河村君の穏やかな顔はわたしの心に深く残っています。これがゴルフの真髄かもしれません。
早々に浴室を出ると岡本君もすでに上がっていました。頼りがいのある幹事です。下着をはいていると第3組が入ってきました。谷君が「疲れた。もうだめだよ」と汗まみれです。いつもこうなのです。それでいてスコアーは結構まとまっているのです。山田君は妙に落ち着いて入ってきました。疲れた様子はありません。「幹事ご苦労さん」と軽く会釈をして静かに脱衣かごに向かって行きました。
爆発力のある池田君が気になりますが姿が見えません。何をしても素早い人ですからもう浴槽の中でしょう。
みんなが浴槽に消えてから間もなくして坂倉君が「いやーっ、まいった」、「山田が7アンダーだよ」と大騒ぎで出てきました。でも顔はさわやかでした。14日の日曜日に横峰さくらにプレーオフで負け、悔し涙を流した上田桃子の顔とは違います。
私が服を着終えると、「午後はいいんだが、朝がいつもだめだよ」と山下(正)君が訴えにきました。腰痛持ちですから朝は恐ろしくて腰をかばいます。
ゴルフはこれが致命傷になります。私が前回グロス81で優勝したとき、パートナーだった山下君は午後のINでは最終ホールまで2オーバーをつづけ、わたしはオナーが一度も取れませんでした。
ドライバーショットやラフからのアプローチショットも素人離れしていました。
江田島時代も水泳、相撲などの大会で私の優勝を阻んだのはいつも強靭な体力に恵まれた山下君でした。私はのろまで運動神経には無縁です。ただ、雨の日も暑い日もひたすらに努力するのが好きです。瞬発力がない代わりに体の故障もありません。この辺はどう考え、どう答えたらよいのか凡人の私にはわかりません。
こんなことで今回の成績は風呂の中でだいたい見当がつきました。そして、そのとおりの結果になったのです。
幹事の岡本君が恐ろしいほどのスピードで賞品の準備や会計をしています。さすがに経補幹部です。わたしは技術幹部ですから一年かけて設計計算を行います。ですから急を要するコンペの計算は気が動転して何度検算をしても結果が合わなくなってしまいます。成績集計表もすでに受け取っていますが幹事以外に公表はしていません。
みなさんがパーティー会場の椅子に座り終える前に作業は済んでいました。パーティーがはじまってしばらくすると「もうそろそろ集計表がフロントで出来ているのではないか」との声が上がりましたが、「もう全部終わっているよ」と誇らしげに答えたのでした。
成績発表後しばらく歓談を予定していたのですが、優勝者の山田君から「優勝スピーチはまだなのか」との催促です。なんでも今日の1番ホールのティーショットで優勝を確信し2番ホールから優勝スピーチの案文を考えていたのだそうです。パートナーは異口同音に「山田は一日中安定していた」と言います。
NP賞2つも取りましたからそのとおりなのでしょう。堰を切ったようにスピーチがはじまりました。
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