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(下記は、頑固な年寄りにならないための、精神科医 和田 秀樹氏の意見です。)
(中略)
どうも(脳内の)前頭葉というのは、意欲や創造性、感情のコントロール、そして思考のスイッチなどの機能を果たしているのではないかと現在は考えられている。つまり、前頭葉が老化すると、意欲が衰えるし、創造性も落ちてくる。感情のコントロールが悪くなって、雷親父のようになる。また、はっきりした保続は起きなくても、たとえば、ある考えに固執したり、前例踏襲にこだわったりするような形で、思考の切り替えが悪い人間になってしまう。(中略)
では、どうすれば、前頭葉の老化を予防できるのだろう。脳トレでおなじみになった東北大学の川島隆太教授は、計算と音読を勧めている。実際、簡単な(自分にとって難しすぎず、すらすらとできるものがいいらしい)計算や音読をすると、前頭葉の、とくに重要だとされる、前頭前野という部分の血流が非常に増えることが機能的MRIという画像診断で明らかにされている。(中略)
実は、前頭葉というのは、不測の事態に備える脳という考え方もある。たとえば、通常の会話や読書をしている際には、前述のように側頭葉しか使わないし、計算やパズルの問題でも前頭葉は使わない。ルーティンワークの際には、前頭葉は使わない。ところが、突然予想外の災害にあったとか、そういう際に前頭葉の能力が必要とされる。人間というのは、動物と比べて、この手の不測の事態に強いのは、前頭葉が発達しているおかげだということである。
逆に、不測の事態が起こらないルーティンワークばかりであれば、若いとき以上に、中高年以降は、前頭葉の老化が早まってしまうだろう。
要するに、前頭葉を使い続けるためには、前例踏襲では予想のつかないことや、クリエーティビティの発揮できるようなこと、わくわくするような体験をしなければいけない。
たとえば、作家や画家や音楽家のような人がいつまでも若々しいのは、この手のクリエーティブな仕事では前頭葉を中高年以降も使い続けるからだろう。
(中略)ブログでなるべくユニークな論を展開するとか、サラリーマン川柳のサークルに入るとか、なんらかの形で創造性を発揮することはできるので、そうしたことを中高年以降は意図的にやったほうがいい。また、「前例踏襲」は読書などについても同じことがいえる。たとえば、保守的な人は、自分がファンになっている保守論人の本なら喜んで買うが、左翼的な思想の本は最初から読まないだろう。納得のため、持論の強化のためにしか読書が用いられないのだ。しかし、前頭葉の活性化のためには、自分と違う意見の人の本を読んで、予想外の論の展開に接したり、反論を試みたりするほうがいい。ハラハラドキドキする上に、展開が読めないことをするのが、おそらく前頭葉をもっとも使うことになるだろう。(中略)
そして、中高年の人間をもっともハラハラドキドキさせ、展開が読めないものは、恋愛だろう。これは、自分の性の性ホルモンも活性化させる。男性なら恋愛すると男性ホルモンの分泌が増えるし、女性も同様に女性ホルモンの分泌が増える。また、ファッションや外見にも気を使うようになるし、おいしいレストランやワインを探すようにもなる。いろいろな意味で、恋が人間を若返らせるのは確かなことだろう。もちろん、配偶者の同意が得られればの話であるが。
せめて、片思いでもいいから好きな人を作って、空想デートでもいいから、前頭葉を使ってほしい。
和田 秀樹
(精神科医。1960年生まれ。東京大学医学部卒、現在、『和田秀樹こころと体のクリニック』院長。国際医療福祉大学大学院教授)
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