近況レポート
 

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水滸伝 (H21.6.18)


 北方 謙三 著の「水滸伝」19巻を読み始めると、吸い込まれるように誘い込まれて、16巻目、何なのか、この辺りで、立ち止まり己を見つめてみようと思いつつ、また、通勤電車で読み続けている。

 108人の英雄、心意気(志)ある活動、生き様、荒々しい中での前向きな生活欲、食欲、性欲。古典の中国時代(北宋)ではあるが、身近な想像可能な世界に自分自信が突入して行くのが楽しい。人間の生命力を小説中で読み取りながら自分の今に比較している。

 更に、この「水滸伝」は、勇気、人格形成、対人関係そして、落とし穴等、次々と展開する。それぞれの主人公がそれぞれに生き様を見せる。死に際には、意外と悲惨性がなく、少し惜しみは感じるが、各英雄達は、印象に残る。生死そのものは、その寸前まで予期させない筆法、場面、場面で引き込まれる一語、一語がある。

 登場人物が、根底にたくましさと運命を背負い込んで生き抜く行動力は、中国原野と埃、そして、厳しい自然との対峙、かつ、安息の眠り等が、匂い感じられる。暗闇の夜、焚き火を囲む一時のうれしさ、獣肉を焼く匂い、肉入りの饅頭を食べ、酒を飲み語らう、束縛のない時間の経過、管理社会を飛び出した者達が結び合い、結束の輪を広げる。

 宋江(リーダー)が掲げる「替天行道」、内容は読書中に想像理解出来るのか、まだ、説明箇所はない。この下に、みんなが集まる、「替天行道」の中には、琴線に触れる文章が存在することが想像できる。人間社会の構成で、それぞれに分相応の生き方がある。しかし、志があれば、数段上へと不思議な力、推進力が沸いてくる。勇気を勇気と思わず進めて行く不思議な力が背景にあり、物事がおしすすめられる。

 官軍(宋軍)との戦い、暗殺あり、実戦、特殊部隊同士のぶつかり合い、スリルに満ちた駈け引き、がやがて、これが、大きな導火線となり大戦闘(場)へと展開する。惜しまれる勇者やリーダーが傷つき、死ぬことになる。しかし、必ず後継者が誕生(発生)、戦いは、前へ前へと進められる。死に際は、それぞれにことなるが、前触れなくやってくる。ただ、全くその運命に逆らってはいない。必ず、自分のキャラクターを自分自身が良く理解認識していて、凄い生き様の完結を見せている様な気がする。

 登場人物のすべてが、自分の分、才覚を認識して、一生懸命に生き、欲望も妬みもなく、自然体の中に漲る自信、かつ、才覚が素晴らしい。まさにプロフェシナルである。梁山泊を中心に禁軍(宋軍)との戦い、歴史の流れ、その中で、自分を見つめて生き、燃える物を掴んだ人が幸せ者。そして、その運命は誰もが知らない。しかし、予期出来ない所、時にやってくる。

 「水滸伝」の結末は如何に、それよりも、人間は、志に生き、今を精一杯生きる事、これが、一番辛く、楽しくもある。そこに道がある。それは、最上ではないのか?と教えてくれている。一種の爽快感が残りつつある。


                          岡本


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