クラス諸賢
小生儀昨6月会社を退職、第3の人生に入りました。恒例の年賀状を欠礼した諸兄もいますので近況報告を兼ねご挨拶申し上げます。
7月以降所謂「サンデー毎日」とはいうものの以前から係っていた二つのNPO法人の活動で貧乏暇なしです。
一つは、「NPO法人平和と安全ネットワーク」で、安全保障関係の情報を分りやすく正確にインターネットで配信するサイト「チャンネルNippon」で2年前の設立以前から係わっています。「危機管理ライブラリー」では救助犬安芸の活躍ぶりも紹介され、本HPコラムに書いた「犬と軍神」も「キャプテンズキャビン」で配信中です。
「チャンネルNippon」
「一言言いたい」コーナーや「一老兵のつぶやき」サロン等自衛官OB諸兄の意見開陳の場もありますので是非投稿して下さい。
もう一つは「NPO法人救助犬訓練士協会」の国内渉外兼事務局顧問をやっており、先日のNZ地震に際し我々の保有する国内唯一のINSARAG(International
Search And Rescue Advisary Group)認定犬と人員2名を何とか政府専用機に便乗派遣すべく外務省・防衛省と交渉しましが、外務省のきわめて官僚的な対応で実現できませんでした。
明らかに日本国民ががれきの下で被災しているというのに民間の犬というだけで差別を受けはるかにレベルの低い国緊隊(警視庁保有)の犬が僅か3頭派遣されたのみです。
以下は、その交渉の顛末と担当者としての所感です。
2月22日(火)
08:51頃(現地時間12:51)
ニュージーランド(NZ)クライストチャーチでM6.3規模の地震発生
23時頃 TVニュースで政府専用機の派遣、家族も同乗を知る
23;20 防衛省統合幕僚監部国際協力室に政府専用機の運航予定、救助犬1頭人員2名同乗の可否について打診
――>「運航予定は出発地も含め未定。防衛省としては人70名、貨物10トン以下の枠内であればよい。人選等は外務省国際協力局国際緊急援助・人道支援課が調整窓口」
23:55 外務省国際協力局国際緊急援助・人道支援課に2回電話し、やっと担当者とコンタクト
――>「まだ各省庁と調整中でどのような体制で行くか未定。救助犬の便乗については検討のうえ後刻連絡する」
2月23日(水)
07:20 何の連絡もないので外務省に電話
――>「航空機の運航予定、体制含め検討中。決まり次第連絡する」
07:30 念のため防衛省に電話
――>「出発地時間等調整中、未定」
07:50 外務省から電話
――>「以下の理由により、民間の救助犬チームについては便乗させないことで課長が決裁したので今回は断念して欲しい。
@動物検疫についてNZ政府が受け入れるかの問題がある
A政府専用機に国際緊急援助隊以外の民間人と犬が搭乗することについて防衛省が難色を示している」
@Aともに警視庁の犬も民間の犬も同じ条件であり、政府専用機で民間救助犬チームを同行させると政府(外務省)が決めれば問題ないのでは、と質問したが明確な回答なし
08:10 念のため防衛省(統幕国際協力室)に電話
――>「成田を昼過ぎ出発予定。70名編成の国際緊急援助隊が乗ると聞いている。犬について国緊隊(警視庁)の犬であろうと民間の犬であろうと差別しない。人員70名、貨物10トンの枠内で外務省が決めれば良い。」
09:00 民主党水戸参議院議員を通じて徳永外務省政務官(政府専用ー10:30 機派遣団長)にお願い(村瀬理事長)
――>「派遣部隊の編成、人員もすでにセット済みで搭乗は不可能。帰国してから話を聞きます」
(報道によれば派遣人員は66/67名)
かくして、14時過ぎ政府専用機は成田を飛び立ちました。
国民の生命・財産の保護(救出)は国家の重要な任務です。今回明らかに日本人十数名ががれきの下に生き埋めになっているという情勢下、政府専用機派遣の情報を入手し民間からとは言え1頭でも多くの災害救助犬をと派遣を申し出ましたが、結果的に国内唯一のINSARAG認定救助犬を活用できなかったのは残念でなりません。
政府専用機を断念してからも民間機による派遣を模索しましたが、@NZ本国から受け入れの承認がなければ成田出国の動物検疫はパスしないANZ当局自体が外国政府関係以外の救助隊は受け入れないことが大きな障害で今回災害救助犬の派遣が実現できませんでした。
ちなみに、日本の国緊隊の救助犬は警察からの3頭編成ですが、これでは到底24時間連続の捜索救助態勢には不十分で(1頭の捜索持続時間は約20分)、現行法で可能な自衛隊・消防の保有する救助犬(海自がIRO認定犬の警備犬を2頭保有、消防は現在のところ救助犬自体保有せず)の補強のほか、民間の国際救助犬資格を有する犬を活用できる体制についても抜本的に検討する必要があります。
*海外では救助犬は軍、消防、FEMA等の官と民間ボランティアの両者が保有し、数も多くないことから相互連携の体制がとられています。例えば、中立国オーストリアではあらかじめ登録した民間の災害救助犬を災害発生時軍の災害救援部隊に編入し海外に派遣する体制となっています。
今回の事案を通じて、大規模災害は国内では数年という頻度ですがASEANという枠組みで捉えれば毎年というほど発生しており、多くの支援者の方のご理解の下我々が苦労をして作出した災害救助犬は国内という狭い範囲のみでなく、世界レベル(少なくともアジア・太平洋地域)で活用するという発想が必要であり、またそれを可能とする国際基準レベルの救助犬の作出と出動体制の確立が必要なことを痛感しました。
今回の外務省のきわめて官僚的な対応は残念であり、今後正攻法はもとよりあらゆる手段(政治家、マスコミ、インターネット)を使って外圧を掛けていく必要があります。
諸賢におかれて何か良い方策があればご助言いただきたい。
以上、今回の地震に関し安芸二号便りの愛読者の皆様から二,三照会がありましたので近況報告を兼ね報告いたします。(23.3.9記)
三浦の羊飼い
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